今村紫紅作『近江八景』の掛け軸買取を実施中!【SATEeee掛け軸買取】へ

1.今村紫紅作『近江八景』を売りたいお客様へ

今村紫紅は明治・大正期に活躍した日本画家です。はじめ松本楓湖に師事して歴史人物画を学びつつ安田靫彦らと紅児会に参加し、その中心的存在として活躍しました。しかし大正元年第6回文展に出品した『近江八景』で、紫紅は大きな画風の転換を果たします。従来の観念にとらわれない独自の芸術様式を示した本作を機に、紫紅は新たな絵画様式へと舵を切りました。

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2.今村紫紅作『近江八景』についての解説

歴史画や歴史人物画を描き続けてきた紫紅が、突然描いた風景画が『近江八景』の八幅対でした。近江八景は中国の瀟湘八景を真似て琵琶湖畔の名勝八景を指した画題です。江戸時代にはすでに典型的な図様として周知されていましたが、紫紅が描いた『近江八景』は大和絵の色彩と後期印象派的な色彩の点描を、柔らかな南画風にまとめたものでした。この画で高い評価を得た紫紅は、以後しだいに歴史画から離れ、風景画の新たな境地を拓いていきます。

3.今村紫紅作『近江八景』の作品の特徴について

『近江八景ー勢田・堅田・石山・矢走・唐崎・粟津・三井・比良』として発表された八幅対は、大正元年の7~8月に紫紅が琵琶湖付近を実際に旅して歩き、写生したスケッチをもとに描かれた夏の八景です。伝統的な近江八景といえば「石山秋月」「瀬田夕照」「粟津晴嵐」「矢橋帰帆」「三井晩鐘」「唐崎夜雨」「堅田落雁」「比良暮雪」といった春夏秋冬を描いた八景を示しますが、紫紅の『近江八景』はすべて夏の景なので、例えば「比良暮雪」にあたる『比良』の幅では、雪景色ではなく青い夏空にもくもくと湧き上がる雲と陽光が溢れる群青の琵琶湖水が描かれています。ここで紫紅は古典的な山水画の様式を脱して、西洋の印象派を思わせるような点描法を用いながら、明るく豪快な画風を確立しました。

4.今村紫紅作『近江八景』の買取相場価格について

現在、今村紫紅の『近江八景』は、国の重要文化財として東京国立博物館に収蔵されています。特に大正期に描かれた風景画は、真作であれば高額の取引になると思われます。作品の落札例をあげると、『清水寺の春』という作品が落札予想70万円~120万円とされた縦109.9cm×横40.8cmの絹本彩色の軸装作品が160万円で落札されています。この作品は右下に落款・印があり、横山大観の箱書付で、東京美術倶楽部鑑定委員会の鑑定証書が付けられた作品でした。

5.今村紫紅作『近江八景』についてのまとめ

紫紅は常々「僕は古いものを破壊するから、君たちはそれを建設して、新しい世界にしてくれ」と速水御舟ら若い画家たちに語ったといいます。大正元年に『近江八景』を発表してから大正5年に亡くなるまで、この短い期間に描かれた新風景画は、紫紅の可能性に満ちた試みでした。自らが先頭に立ち、美術界に新風を吹き込みながら進むその姿に、多くの後進が集い、後に続きました。その功績は美術史の中でも高く評価され、36歳の若さで早逝したのが惜しまれた作家です。今村紫紅の作品をお持ちでしたら、ぜひ専門家の査定を受けてみることをお勧めいたします。